福井県沿岸で遊泳者50人以上をかんだミナミハンドウイルカは一体どこから来たのか。取材を進めたところ、このイルカが属していたとみられる群れが新潟県沿岸にいることが分かった。暖かい海を好むはずのイルカの群れが北に活動を広げる過程で、はぐれたとみられる。専門家は同様の「はぐれ個体」が今後も現れるだろうと指摘する。
多数の人をかんだのは幼いミナミハンドウイルカ。2020年に石川に現れ、福井に南下したことが目撃証言から判明していたが、どこの群れからはぐれたのかは謎だった。
- 【連載はこちら】50人にかみついたイルカを追うと…
記者はまず、問題のイルカの生息域に近い石川・七尾湾の群れ十数頭について調べた。帝京科学大(東京)などの調査によると、国内有数の生息地である熊本・天草由来の2頭が、01年ごろに移ってきて繁殖した群れだという。ミナミハンドウイルカとしては日本海側で唯一の群れで、世界最北の定着例と考えられてきた。
石川の群れに一時接近
この群れを全頭把握しているダイバーや船長によると、問題のイルカが合流したことはないが、近くに現れたことはあった。ダイバーの坂下さとみさん(64)が20年4月に撮った水中動画には、背びれに三つの切れ込みがある問題のイルカが映っていた。
問題のイルカは石川の群れに属さず、別の群れからやって来たらしい。日本海側に未知の群れがいる可能性が出てきた。
取材に協力してくれた人をたどると、新潟県でイルカの観察を続けている人が見つかった。海辺でドローン撮影を手がける大原淳一さん(60)。大原さんの協力で記者は村上市(昨年10月)と上越市(今年5月)で計3回、群れを観察した。
記事の後半では、これまで一般に知られていなかった群れの動画を公開し、イルカを取り巻く「異変」に切り込みます。
新潟の群れは波間に灰色の背…