長谷寺の仁王像を修復する吉田安成さん=2024年9月5日午後2時0分、高知県香南市夜須町羽尾、羽賀和紀撮影

 高知県中部に位置する香南市夜須町羽尾(はお)地区。ふもとの集落から、つづら折りの山道を車で30分。重畳する山並みを走った先に長谷寺(ちょうこくじ)はある。

 奈良時代に創建された禅寺で、山門には高さ約2メートルの2体の仁王像が鎮座してきた。しかし長年の雨風にさらされて、痛々しい姿を見せていた。とくに吽形(うんぎょう)は、左腕が落ち、足先はシロアリの被害で朽ちてなくなった。先代住職の小林玄徹さん(71)は「ずっとこの地を見守ってくれていた仁王様が朽ち果てるんじゃないか」との思いを抱えていたという。

 4年前に住職に就いた竹井玄要さん(49)が修復を呼びかけ、全国800人ほどから約2千万円を集めた。作業を担当したのは四国で唯一とされる木彫り仏師の吉田安成(やすまさ)さん(49)。羽尾に一家3人で移住。風化した部分に樹脂を塗って修復し、欠けた足先は新たに造るなどした。

 修復を終えた2体は、10月下旬に再び山門へと運び込まれた。「何百年もの間この地を守り続けてきた仁王様には、これからも羽尾を見守り続けてほしい」と吉田さんは願う。

 羽尾はかつて、隣接する安芸市や芸西村、香我美町(かがみちょう)(現在は合併して香南市)に通じる交通の要衝だった。町村合併で旧夜須町に編入された1955年には65戸236人が暮らしていたという。

 しかし主産業だった木炭作りがプロパンガスの普及などで衰退。77年には103年の歴史があった羽尾小学校が廃校となり、若い世代は山を下りた。前後して近隣の集落では住人がゼロになる無住化も進んだ。

「お堂じまい」の相談が増加

 2006年に編集された「夜…

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