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人工衛星への利用が期待される竹由来の新素材「竹CNF」を手にする衣本太郎・大分大教授=2024年11月27日、県庁

 人工衛星の部品から発生するガスが衛星に搭載したカメラのレンズを曇らせる問題を、大分大学が開発した竹由来のセルロースナノファイバー(竹CNF)が解決する可能性があることが実証された。近く国際宇宙航行アカデミーの公式誌に論文が掲載される。

 竹CNFを開発したのは、大分大学理工学部の衣本太郎教授らのグループ。竹を特殊な方法で加工し、セルロース純度の高い竹CNFを作り出すことに成功した。衣本教授らは宇宙での利用を目指し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や静岡大学と共同研究を進め、人工衛星の新しい素材として利用できないか、研究を続けてきた。

 一般的な人工衛星は軽量化のために接着剤や樹脂が多く用いられるが、真空の宇宙空間で200度近い高温にさらされると、様々な有機性のガスが発生する場合がある。ガスが人工衛星に搭載されたカメラのレンズに付着してしまうと、画像がぼけたり、不鮮明に写ったりするなどし、その後の観測に大きな影響が出てしまう。

 2001年にはアメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が1997年に打ち上げた土星探査機「カッシーニ」で、衛星の素材から発生したガスがレンズに付着し、観測画像が乱れる問題が起きたという。

 こうした問題を引き起こさない素材として、衣本教授らは竹CNFに着目。JAXAの筑波宇宙センターで、宇宙空間と条件が似た真空で加熱した状態を再現して竹CNFの特性を調べたところ、水しか放出せず、問題となる有機性ガスは全く発生しないことが実証されたという。

 衣本教授らは今後、竹CNFを固めたものを人工衛星の部品に使ったり、ガスを発生させる素材を竹CNFでコーティングしたりする技術の開発に取り組んでいくという。

 近年は、宇宙のゴミ「スペースデブリ」にならない、ホオノキなどの木材を使った人工衛星も作られているが、竹はまだ使用されたことがない。木材と同様、宇宙環境に優しい素材としても期待できるという。

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