まだ午前8時半、余裕だと思っていた。2月中旬の土曜日。散歩のスタート地点、シーサイドライン「海の公園柴口」駅から横浜市金沢区にある市民農園「柴シーサイドファーム」を目指し、15分ほど坂を上った。
土日には野菜直売会がある。売り切れは早いと聞いていたが、直売所に着いたとたんに力が抜けた。販売台の上はすでに寂しくなっている。
「7時半の開始前には行列ができていて、かなりみなさん買っていかれるんですよね」
売り場に立っていた斎田和子さんが教えてくれた。気を取り直して、甘夏とナバナを買った。すぐ近くには柴漁港がある。「漁師をしながら畑もやっている人たちが結構いるんですよ」。こう話す斎田さんも夫が漁師で、畑ではミカンやジャガイモ、タマネギなどを作っているという。ナバナは油との相性がいいので、しょうゆを加えて炒めるとおいしいと教えてくれた。こんな都市部なのに、漁業や農業が身近なことに驚いた。
20年ぶりに復活した朝日新聞神奈川版の人気連載「私の散歩道」。神奈川とっておきの散策ルートを記者が歩いて紹介します。
早朝から客でいっぱいのパン屋
香ばしいにおいに引かれ、坂…