「ワーキングホリデー(ワーホリ)制度」を使って、オーストラリアへと渡る日本人が増えている。記録的な円安で、初期費用の負担が重みを増す中、豪州行きを選んだ人たちはどんな理由で海を渡り、どんな風に過ごしているのか。
シドニーとブリスベンで合計19人に会い、それぞれの「ワーホリ物語」を聞かせてもらった。
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第3の都市ブリスベンのカフェで出会ったのは、埼玉県出身の大学生の男性(22)だ。
大学3年の終わりに休学し、豪州に来た。外国に来るのは、今回が初めてだ。「海外に目を向ければ、将来の選択肢が広がると思った」と話す。
英語は勉強中だが、テクノロジーを駆使して踏ん張っている。
意思疎通には翻訳アプリが欠かせない。仕事探しの履歴書作りは、「ChatGPT」を使って「なめらかなネイティブ」風に仕上げた。日本食レストランの面接で、「次回は巻きずしを作ってもらいます」と言われれば、YouTubeの動画で作り方を頭にたたき込んだ。
これまでは実家暮らし。「こっちでは人の手を借りず、全部自分でやらなきゃいけない。忍耐力がついた」と話す。

シドニーで暮らす岡山市出身の立花明里さん(27)も、外国暮らしで自信をつけた。元ウェディングプランナー。在職中に身につけたヘアメイクの技術で、美容の仕事に就いている。
立花さんは「外国人のお客さんに接して、友達もできた。英語もうまくなった。経験値がぐっと上がった」と話す。「将来子どもができたら、海外経験をさせて、グローバルな人に育てたい」と目を輝かせる。
豪政府によると、日本人向けのワーホリビザの発給数は昨年6月までの1年間で1万4千件超に達し、過去最多を記録している。
ワーホリの醍醐(だいご)味は現地で働きながら、語学を学んだり、観光したりできることだ。
勉強より「出稼ぎ」、変わる渡航目的
だが、いまそうした考え方が変わりつつある。
シドニーを拠点に、留学エージェント「マイステージ」を営む田中千尋社長は「コロナ禍を境に、ワーホリビザで渡航する人の目的が変わった」と感じている。
田中さんは、同社のビザ取得代行サービスなどを受ける約400人のうち、「語学の勉強よりも、すぐに働きたいと希望する『出稼ぎ』目的の人が全体の6~7割を占めるようになった」と話す。
「出稼ぎ」を主な目的に渡航した人たちはどんな人たちなのだろうか。
後半では、事前準備やSNSの活用法などにまつわる体験談を紹介しています。
滋賀県長浜市出身の筒井研次…