鳥飼玖美子・立大名誉教授=篠塚ようこ撮影
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 同時通訳者として活躍の後、日本の英語教育や異文化コミュニケーション学の専門家として大学で研究を進め、さらにはNHKの英語番組でも広く親しまれている立教大名誉教授の鳥飼玖美子さん。大事にしているものを見せてくださいとお願いすると、取り出したのは、金色の台に赤い石がのったスクールリングでした。詳しいお話をうかがいました。

 これは米ニュージャージー州のペンソーケンという町の高校を卒業した時に頂いたスクールリングです。1963年から64年にかけて留学しました。同時通訳、英語教育、異文化コミュニケーション学……。その後の私が歩む人生の根っこは、この時に培われたと思います。小さくて見えにくいかもしれませんが、あの1年間を思い出させてくれる大切な指輪です。

 テレビで見る「名犬ラッシー」などのドラマ。中学の英語教科書「ジャック・アンド・ベティ」で描かれる日常生活。当時はそれらを通じて「アメリカってどんな国なんだろう」と好奇心を膨らませた若者が多く、私もその一人でした。高校生になってラジオ講座「百万人の英語」のテキストに、AFSという留学制度で米国留学中の高校生が近況を寄せているのを見て、関心はさらに高まり、よし私も挑戦しようと決めました。

不良になるのがオチ 先生は大反対

 ところが担任の英語の先生に相談すると、大反対。「まずは大学受験。留学はそれからで結構。高校生で留学したら不良になるのがオチです」と。女子校というのもあったのかもしれませんね。私は「自分の人生は自分で決めます。先生に私の人生を決める権利も義務もありません」と言ったんです。先生は怒りましたね。英語教諭の英文による推薦状が必要なのに書いてくださらない。仕方ないから自分で書いて、先生を追いかけ回して、ついに、署名してもらいました。試験は1度目は面接で落とされましたが、2度目でようやく合格しました。

 それほど行きたかった。必死…

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