チ・ウィン=米オレゴン州ポートランド市近郊

現場へ! 社会を変えるお金の流れ(5)

 米国オレゴン州ポートランドから車で約2時間の街に住むチ・ウィン(42)。1990年に難民としてベトナムからやって来た。移住当初は教会が食事や住居を提供してくれ、奨学金で大学に進んだ。

 6人家族で、「子どもを広々とした自然の中で育てたい」と、果樹園付きの家に住み、鶏や豚を飼う。夫とは再婚同士で、互いに2人の連れ子がいた。

 ウィンはバイセクシュアル(両性愛)で、最初の結婚は同性婚だった。子どもは精子提供を受け、彼女と前妻が1人ずつ産んだ。そういう背景もあり、社会課題に関心が強い。移民支援やフードバンクのNPOに勤め、地元の市議を務めた経験もある。

 今、ウィンが取り組むのが「社会に害を与えない企業への投資ファンド組成」だ。環境(E)、社会(S)、企業統治(G)を重視するESG投資が近年注目を集めているが、ESGをうたっていても、実態が伴わない「ウォッシュ」もある。ウィンがめざすのは、もっと厳しい基準だ。

 ウィンがフードバンクに勤めていた時のこと。そこでは投資による資産運用をしており、ポートフォリオ(資産構成)を見ていて気づいた。投資先のひとつに、民営刑務所を運営する会社があったのだ。米国では民営刑務所が珍しくない。「コスト削減のために囚人の待遇はひどく、現代の奴隷制といわれている。貧困の構造的要因を生み出す側の会社なのでは、と思い、これはおかしい、と言ったんです」。しかし、NPOのCEOの返事は「ESGの助言会社にまかせているんだから大丈夫」だった。

銃や兵器、化石燃料などの企業は除外

 高校や大学の投資クラブに所…

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