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移民の墓に供えられた舟の飾りや花=2025年4月11日、スペイン領カナリア諸島エルイエロ島、フリア・モリンス撮影
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 「190M36 移民 2024年9月28日」

 そう記された名前のない白い墓碑に、アリディアン・マリチャルさん(39)がそっと手を置いて目を閉じた。数秒間の祈りを終えたあと、両目には涙が浮かんでいた。

 「ここに眠っているのは『移民』ではなく、誰かの家族であり、大切な存在だった人。何度来ても悲しみに慣れず、涙がこみ上げてくる」

 西アフリカ沖に浮かぶスペイン領カナリア諸島の最南端にあるエルイエロ島を、4月中旬に訪ねた。西洋で何世紀にもわたり「世界の果て」とされていた人口1万1千人の島は今、アフリカから欧州に渡る密航ルートの玄関口になっている。

 密航者の中には、政治的迫害や紛争から逃れる難民だけでなく、仕事を求めて欧州をめざす経済移民もいる。

 多くはセネガルやモーリタニアの沿岸からスペイン語でカヌーを意味する「カユコ」と呼ばれるガラス繊維製や木造の舟に乗る。カナリア諸島に着くまでの約10日の航海中に、低体温症や脱水症状で亡くなる人も少なくない。

 エルイエロ島の公共墓地には…

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