国連は、ロシアによるウクライナ侵攻にも、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃にも有効な手を打てずにきた。背景にあるのが、当事国ロシアなど安全保障理事会の常任理事国が持つ「拒否権」だ。長く国連改革を唱えてきたユドヨノ元インドネシア大統領は、今こそ改革が必要だと強調する。その具体的な道筋とは。
国際秩序について話し合う「東京会議」(言論NPO主催)出席のため来日したのを機にインタビューしました。
――国連安全保障理事会の常任理事国ロシアがウクライナを侵略するなど、国際秩序が崩壊の危機です。
「第2次大戦後、武力で他国を侵略してはいけないという国際秩序に、世界は同意しました。侵略や武力の威嚇があれば、それを止め、ペナルティーを科すルールです。常任理事国(米英ロ仏中)が特にその責任を負いますが、現実はウクライナ戦争やガザでの紛争を見ても、機能していません」
「国連であれ、地域の国々の結束であれ、多国間主義は瀕死(ひんし)の状態です。このような状態が続けば、強い国、(安保理で)拒否権を持つ常任理事国による一国主義がはびこり、世界の安全保障と平和はカオスに陥ります。世界の状況は深刻で、全ての国連加盟国が声を大にし、決して許さないという意思を示さなければなりません」
――しかしその国連は、当の常任理事国の反対により改革が進みません。多くの人が失望しています。
「私もかつて10年間、インドネシアを率いて、ほかの国と国連改革に取り組んできました。確かに、改革は常任理事国の拒否権によって阻まれてきました。5カ国の拒否権に問題があるのは明らかです。これほど世界情勢が危険であるからこそ、安保理と拒否権のあり方について、真剣に新たな動きを始めるべきです」
――具体的には。
「例えば、常任理事国5カ国…