オウム真理教教祖の松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚

 地下鉄サリン事件から30年がたった。

 オウム真理教関連の刑事裁判を傍聴してきた私がなお今も鮮明に思い出すのは、初公判から半年後の1996年11月、高弟たちが教団の武装化について証言を始めたことにすっかり動揺した「教祖」が法廷で騒いで退廷させられた時、興奮して裁判長に向かって叫んだ言葉だ。

 「私はあなた方に従う魂じゃない」

 「ここは裁判じゃない。劇場だ」

 修行を通じて自分は「最終解脱」した「至高の存在」だとすっかり思い上がった男が弟子たちに説いていたのは、殺人を肯定する教義だった。

 「地獄に落ちるような『悪業(あくごう)』を積んでいる者を『成就者』が殺して天界に上昇させることは許される。自分に抗(あらが)う者を殺すのは殺人ではなく、救済だ」

 自らの処刑におびえながら、そう語って自らの権威を保とうとするのだった。

心を打った弟子たちの言葉

 心を打ったのは、この無差別…

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