8月1日に開場100周年を迎える阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で、同じく今年100周年の日本将棋連盟が12月8日に記念対局を実施する。神戸市在住の谷川浩司十七世名人(62)は、甲子園が本拠の阪神タイガースの熱心なファン。高校時代に母校の野球部を甲子園で応援した際に見た景色は、今も脳裏に浮かんでくるという。
――熱心な阪神ファンですね。初めて日本一になった1985年のシーズン中、甲子園のロッカールームに入られたこともあるとか。
「知人の紹介で、(当時の)吉田義男監督に案内していただきました。将棋を好きな選手が多いと知ってはいましたけど、本当にロッカールームに将棋盤と駒が置いてあって、ビックリしました。私に気付いた川藤(かわとう)幸三選手が、まるで『指しましょう』と言わんばかりに将棋盤の前に座られて……。試合の前なので、対局は遠慮しましたが」
――セ・リーグ優勝を果たした2003年には、テレビのドキュメンタリー番組で、甲子園で阪神を応援する姿も放送されました。
「北海道での王位戦の対局室に、対戦相手の羽生善治九段に了解をもらって、カメラが入ったり、自宅でエアロバイクをこぐ姿を撮影されたり。棋士の生活を追う取材の一環でした。矢野輝弘(あきひろ)(現在は燿大(あきひろ))選手がサヨナラ打を放って逆転勝ちした試合で、みんなで大喜び。同じ番組で私の次の放送回が矢野選手で、こんな偶然があるのか、と」
――王位と棋王の二冠王だった2004年には、同じく熱心な阪神ファンの弟弟子、井上慶太九段(60)と一緒に甲子園を訪れ、将棋ファンで選手会長だった今岡誠(現在は真訪)選手に高級な将棋盤と駒を贈ったことも。
「井川慶投手ら将棋ファンの選手が多くて、甲子園の盤駒は大いに使い込まれていると聞きまして。『そんなに愛してくれるとは』と感激して贈呈しました」
――2008年、将棋も強い岡田彰布監督にアマ三段の免状を贈ったことも。
「05年のセ・リーグ優勝後に、岡田監督の後援会の祝賀会で乾杯の音頭を取ったご縁もあり、私が手渡しさせていただきました。その後、解説者時代も経て、現在も監督ですが、将棋も野球も、先の先まで読んでおられるな、と。目先の1試合だけではなく、長いスパンでも考えておられる、というのは(テレビなどで発言を聞くと)、よく分かりますね」
――野球と将棋で共通点を感じますか?
「将棋界はAI(人工知能)を活用しながら研究を重ねていく時代ですが、野球界も、いろんなデータを利用するようになったと聞きます。AIやデータで、理論的には将棋なら、ある局面での最善手、野球なら、ある場面での最善策はあるにしても、実際にプレーするのは将棋も野球も人なので、場面ごとの最善策は、人が行う限り、変わってくるはずです。将棋界も野球界も、これから時代がいくら変わっても、その主役は人で、だからこそドラマが生まれると思っています」
――高校生だった1980年には、母校の滝川高校(神戸市須磨区)の野球部が甲子園に出場しました。
「春の選抜大会、夏の全国選手権大会。春夏連続出場でした。その年のドラフトで当時の近鉄バファローズに1位指名された石本貴昭投手らが同級生です」
――この年の第52回の選抜は…