現場へ! 終わりなき育児に希望を(4)
「女子力あげんとね」。福岡市の放送局で働く大中(おおなか)早苗さん(56)の朝は忙しい。長女(20)の着替え、心拍数や血中酸素濃度の記録、そして洗顔。話しかけながら泡立てたフォームをもみ込んでいく。温めたタオルで顔を包むと、うっとりとした表情になる。
たんを取りやすくするための吸入、たんの吸引、針を刺して血糖値の測定……。朝食は4回にわけて少しずつ。胃ろうに注入する栄養剤には昆布や干しシイタケでとった出汁(だし)を混ぜて人肌に温める。9種類の薬は水で溶いて注入。近くに住む義母(81)と交代し、午前9時に出勤するまで分刻みで動き続ける。
大量出血による緊急手術で生まれた長女は、胎内で血液が行き届かなかったため脳に損傷を負った。寝たきりで目は見えず耳も聞こえない。呼吸を安定させるため、昨年のどに穴を開ける気管切開をした。今は週2回生活介護事業所に通う以外は家で過ごす。
同じ会社に勤める夫(58)、近くに住む義母と義父(87)。4人態勢で20年間走り続けてきたが、ここに来て限界が近づいている。義父母は老い、自分の老いも始まっている。「今日一日娘の命をつなぐ。毎日それだけで生きてきたけど、はっと気づけば私がこんなになっていた」
1日4回のインスリン注射で目盛りが見えづらくなったのは40代半ば。今は注射器についたダイヤルをカチッカチッと回しながら「1、2、3」と声に出して確認する。
「だけん、働かんと」
27キロの長女を抱えてのベ…