Smiley face
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今田美桜さん=横関一浩撮影
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 ♪そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ胸の傷がいたんでも――

 俳優・今田美桜さんにとって、「アンパンマンのマーチ」は幼い頃から無意識に口ずさむほど身近な存在だった。その歌詞はいまも心に深く残っている。

 31日から始まる連続テレビ小説「あんぱん」(月~金曜、朝8時)で主演を務める。放送100年の節目に放送される112作目の朝ドラは、アンパンマンの生みの親で、漫画家・やなせたかしさんと人生をともに歩んだ妻・小松暢(のぶ)さんをモデルにした物語だ。

 今田さんが好きなキャラクターは、好奇心に大きな目を輝かせるドキンちゃん。暢さんがモデルと言われている。

 「アンパンマンは、子どもの頃から、ずっとそばにいる当たり前の存在でした。役を通して、やなせさんが伝えたかった〝生きるよろこび〟は大人になった今、深く響いています」

 物語の最初の舞台は、昭和の初めの高知。主人公の朝田のぶは、幼いときに父を病気で亡くして伯父の家に引き取られた柳井嵩(たかし)と出会う。2人を結び付けたのは1個の「あんぱん」だった……。

 現実では新聞社で出会った2人だが、ドラマでは幼なじみという設定。物語にはフィクションの要素も織り交ぜられている。

 暢さんに関する資料は、やなせさんに比べると決して多くはない。だからこそ、今田さんは想像力を働かせて役を作り上げた。

 「やなせさんが書かれた本などを見ると、時折、暢さんのことが出てきます。暢さんは懐深く、柔らかさと強さを持っている方だと感じました。やなせさんと暢さんがお互いに撮り合っている写真を見て、暢さんのやなせさんに向ける笑顔が参考になりました」

 勝ち気で行動力にあふれるのぶと、少し気弱で自信のない嵩。対照的な性格の2人だが、ドラマ第1週では、のぶが嵩に「うちが守っちゃる」と声をかける場面がある。ただし、これは一面的な見方にすぎないという。

 「嵩はのぶのエネルギッシュさに引っ張られているように感じますが、のぶが困ったら、嵩がさりげなく助ける関係性。性格は反対だけど、支え合える関係はうらやましい」

 嵩を演じるのは、北村匠海さん。6度目の共演だという。北村さんは今田さんの魅力について「リハーサルから段取りからテストから本番まで、何ひとつ手を抜かない姿をずっと見ています。目の前に起きていることを素早くキャッチして、それをすぐに自分自身の感情にできる感受性があり、周りに伝播(でんぱ)する。一番最初に球を投げるのがのぶであり、今田さん」と話す。

逆転しない正義とは

 物語は、やがて戦時下へ。のぶは、戦争の足音が近付くと、周りと同様に妄信的な軍国少女になる。その後は尋常小学校の教師になり、子どもたちを戦争へと駆り立ててしまう。戦後は価値観が大きく変わり、「何が正しいかは自分で見極めなければならない」と、新聞社に記者として就職。その後2人は上京し、結婚する。「アンパンマン」が世に出るのは、まだまだ先で………。

 演じるのぶは、単に夫を支え…

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