【動画】東北の方言を使う劇団や外国人介護職員が津軽弁を話す特別養護老人ホーム。方言がもつ「チカラ」とは=鳴澤大撮影
現場へ! 全国方言サバイバル③
「灯台もと暗し、だったね」
青森県三沢市にある大型ホテル。2005年に星野リゾート「青森屋」として再出発する際、コンセプトが求められたという。スタッフが全国を視察。気づいたのは青森方言の強い個性だ。「青森弁を前面に」。そんな戦略で走り出した。
例えば宿泊者向けの「方言講座」。方言に詳しい「あおもリンガル」のスタッフ7人が講師を務め、「講座の後は宿泊客との距離が一気に縮まります」という。館内各所にはQRコードもあり、スマホをかざすと、津軽、下北、南部の各地方の方言で説明を聞くことができる。
青森弁のおもてなしは奏功し、稼働率は1・5倍に。ところが近年、県内観光を終えた宿泊客から、こんな感想をよく聞くようになった。「テレビで見るような『なまり』に会えると思って青森に来たのに、出会えなかった」
あおもリンガルの櫻庭舜輔さん(34)は、自身が津軽弁を話して宿泊客から「本当になまっているんだね」と驚かれることもあるという。「消えるのは悲しい。ここで全力で、方言を話しています」
「うめえべ。わも食いてえな」。青森県北津軽郡の中泊町。特別養護老人ホーム「静和園」の入所者に津軽弁で声をかけていたのは、インドネシア人介護職員のオッキ・オクタフィアニさん(25)だ。
自宅で単語帳も作り、津軽弁を覚えたという。津軽では3年余り働き、キャリアアップを目指して7月に大阪へ移ったが、園には新たなインドネシア人女性が就職した。海外から「介護の担い手」が絶えない。なぜなのか。
静和園は一時、窮地に陥った。17年度に公営から民営に転換。介護職員が相次ぎ退職して人手不足に。知人の助言をもとに今忠園長(67)が打ち出したのは、外国人の採用だ。19年度に制度が始まった「就労」目的の在留資格者の活用だった。これは県内施設では初めて。途中で退職者も出るものの、外国人材の採用を積極的に続けている。
「覚えが早く優秀な人ばかり」と今園長。障害となる方言も「教えていないのに職場でどんどん吸収しますよ」と驚く。
1993年に活動を始めた宮…