フランスのカンヌで開かれた「カンヌ花火芸術祭」で、清水みなと祭りの海上花火を手がける打ち上げ花火企画製造会社「イケブン」(静岡県藤枝市)の作品が、最高賞の「ヴェスタール賞」を受賞した。一般投票による「オーディエンス賞」も同時に受賞。日本の花火の技術や芸術性の高さが世界に認められた。
花火芸術祭は、フランスのリゾート地カンヌで1967年から続く世界で最も権威のある花火祭の一つ。カンヌ国際映画祭の会場として知られる「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ」が主催する。毎年、バカンスに合わせた7、8月に開かれる。今年はスウェーデン、スペイン、イタリア、ドイツ、日本、フランスの代表が参加。海岸沿いの500メートルに及ぶ会場で期間中に各1回、20分の音楽花火ショーを披露した。
イケブンは8月15日(日本時間16日)に登場し、6千発を打ち上げた。作品のタイトルは「共鳴し合う音」。日本の美学である散り際、去り際の美しさを表現し、アニメや映画の楽曲を合わせて日本の情緒を表現した。
観客の投票も最高評価
フランスの芸術やメディアの関係者、花火師ら7人が、作品を独自性や品質、芸術性、観客の反応などから審査。「前例のない色彩の豊かさ、日本らしさ、力強さを結びつけた卓越した作品」(審査員の講評)として最高賞が贈られた。インターネットによる観客の投票も最高評価でダブル受賞となった。
みなと祭りの花火を動画サイトでみた主催者が高く評価し、3年前にカンヌと姉妹都市提携を結ぶ静岡市に出場の依頼があった。イケブンはEU(欧州連合)の基準に適合することを示すCEマークを2年かけて取得するなど高いハードルを乗り越えて準備をしてきた。本番では、手伝ってくれる現地スタッフとの言葉の壁や仕事の進め方の違いに戸惑う場面もあったという。
同社の高橋美帆子・副工場長は「大きなプロジェクトだったので、無事に上がった瞬間は安堵(あんど)した。観客の歓声や表情は一生忘れられない。これを機会に日本の花火を世界に流通させたい」と受賞を喜んだ。
作品は芸術祭ユーチューブ公式チャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=BGfS6fcHyxY