仕事から引退すると、人は健康になるのか――。人生を見つめ直すのに役立ちそうな研究結果を、慶応大学の佐藤豪竜(こうりゅう)専任講師らがまとめ、米国の疫学専門誌に発表した(https://doi.org/10.1093/aje/kwaf126)。女性では、引退に伴って認知機能が高まり、身体的な自立度も高まっていた。
世界35カ国の50~70歳の男女、約10万人を対象に調べた。男性でも、仕事からの引退に伴って「自分は健康だ」と感じる度合いが向上したが、その度合いは女性ほどではなかったという。
研究に用いたのは、日本の経済産業研究所などによる「くらしと健康の調査(JSTAR)」のデータほか、欧米、中国、韓国などで実施された調査結果。中高年の人を平均6.7年間追跡し、就労状況や健康状態などのデータを集めたものだ。
「健康悪化し退職」のケースを考慮
一般的に、「仕事をやめると日々の張りがなくなり、健康度が下がる」というイメージがある。しかし実際には、健康状態が悪くなったことが、仕事をやめる一因となっている例も少なくない。
このため佐藤さんらは、各国における年金支給開始年齢を加味するなど、なるべく純粋に引退による影響を導き出せるよう、統計学的な工夫をしたうえで分析した。
その結果、男女を合わせた全…