コロナ禍でうつ病と診断された女性。再発の不安はあるが、「考えても仕方ないことは考えないようにしている」という=2024年11月27日、神奈川県、藤谷和広撮影

 5年前の2020年4月、コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出された。感染を防ぐための行動制限は、人を孤立させ、ときに心を壊すほどのストレスを強いた。今は日常が戻ったかのように見えても、一度負った傷を抱えながら、生きている人がいる。

 「この仕事、何の意味があるんだろう」

 そう思い始めると、みるみる集中力がなくなっていった。

 神奈川県内のメーカーで総務の仕事をしていた女性(28)にとって、仕事は決して楽しいものではなかった。使うかわからない資料を作らされたり、上層部の一声で急に方針が変わったり。

 それでも、19年に新卒で入社した当初は、研修や飲み会を通じて同期と交流があり、愚痴を言い合うこともできた。プライベートではカラオケやライブ、旅行でストレスを発散していた。

 翌年からコロナ禍に入り、状況は一変する。家と職場を往復し、業務をこなすだけの日々。気晴らしができなくなり、楽しみは何もなくなった。

 21年3月にリモートワークが始まると、完全に「やる気スイッチ」が消えた。なぜ集中できないのか。ぐるぐると考えてしまい、落ち込んだ。家で悶々(もんもん)としていると、孤独感が募った。

眠れない、食べられない

 夏ごろには日中、急な眠気に襲われるようになった。十分睡眠はとっているのに、パソコンに向かっていて、気づいたら眠り込んでいる。そんなことが続いた。

 そのうち、夜に眠れなくなった。うとうとしてきたら、はっと目が覚める。それを何度も繰り返した。今日も眠れない、と思うと不安になり、余計眠れなくなった。

 原則出社に戻っても、日中は常に眠気と戦っている状態。パワハラを受けたわけでも、働き過ぎでもないのに、仕事がはかどらない自分が嫌になり、すべてを投げ出して逃げたい、消えたいという思いに駆られた。

 食事ものどを通らなくなった…

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