記者は働き盛りと言われる30代。でも大っぴらには言いにくいけど、疲れがたまって仕事をサボりたくなる日だってある。「はたらかないで、たらふく食べたい」などの著書がある政治学者で作家の栗原康さん(45)に相談してみた。サボりたくなったらどうしたらいいですか?
――日々やらなければいけないことが積み重なって、息苦しく感じるときもあります。
それは本当に必要な仕事でしょうか。サボれるのならサボる、力を抜けるのなら抜けばいいんです。よく「楽な仕事なんてない」って言いますけど、それは経営者にとって都合のいい考えかたです。労働者が進んでやりたくないことを引き受けてくれるわけですから。
「人は簡単に死なない」
――サボらずまじめに働き、家族の生活を支える。そうありたいと思うのですが。
それで快適にすごせているならいいのではないでしょうか。しかし「まじめに働く」という倫理観を強制されていないか、ということには自覚的でありたいです。そもそも現代では、働かないと食いっぱぐれて死ぬという恐怖感を、小さいころから刷り込まれて育ちます。でも人はそう簡単に死なない。私は定職についていないですし、世間的には食いっぱぐれていますが、たいがいなんとかなっていますよ。大学院を出た後、37歳まで実家で親と暮らしていたし、今も非常勤の勤め先はありますが、いわゆる定職についたことはありません。
――「働く」ことに疑問を持ったきっかけはなんですか。
高校時代のある朝、満員電車で目の前にいた男性の靴に吐いてしまいました。すると、その男性がカバンで何度も背中をたたいてきたんです。あまりの怖さに、はうようにして次の駅で降りました。
ホームのベンチに座って休んでいると、まわりの人が同じ速度で同じ方向に向かって進んでいく。その足音を聞くうちに、自分が何かの「レール」から外れている気がして情けなく感じる一方、満員電車に必死に耐えることが、ばからしくなったんです。遅刻したっていいじゃないかって。
記事の後半では、栗原さんが「働く」ことについて語ります。昨今もてはやされる「キャリアアップ」「自己実現」という理想の危うさとは。
それ以来、疲れたら途中で電…