昨年11月21日。茨城県が東京で2年に1回開く企業誘致セミナーがあった。首都圏の212社512人が参加し、大いににぎわったセミナーの終了後、県産の食材や地酒でおもてなしをした交流会で、大井川和彦知事がこう胸を張った。
「(2017年に)就任してすぐ分譲価格を下げ、補助金を創設し、矢継ぎ早に対策を打ってきました。県外からの企業立地件数は全国1位を続けています。私が就任してからずっとということです」
経済産業省の工場立地動向調査で、茨城は17~24年の県外企業立地件数が8年連続全国1位。誘致が好調な背景はこのセミナーが物語っていた。
会場では県の4人の担当者がインフラや企業立地環境の説明に立った。県内には重要港湾が二つあり、茨城空港に加えて、圏央道など高速道路が4本通る交通インフラが整備されていると強調。つくばエクスプレス(TX)を使えば、東京・秋葉原からつくばまで最速45分、守谷まで32分と、東京からのアクセスもアピールし、企業にとって優れた立地環境だと訴えた。
都心から近い圏央道沿いに熱視線
比較的安価な地価も魅力の一つといえる。都心から100キロ圏内の県別の工業地平均地価(24年度)では、茨城は1平方メートルあたり2万2400円で、神奈川の約6分の1、埼玉の約3分の1という安さだ。
ただ、課題もある。
独自の補助金を設け、都心からの近さなど立地の強みを生かしての県外企業立地件数8年連続全国1位ばかりが注目されるが、県内には取り残されている地域もある。
8年間の県全体の立地件数は計505件に上る。最も多いのが県西の227件で、県南が126件と続き、両エリアで全体の7割を占めていた。都心に近く、圏央道沿線が企業に選ばれていることがうかがえる。圏央道の県内区間は26年度に4車線化が予定されており、「引き続き立地が進んでいく」と県は分析している。
対して、県央は75件で、鹿行が40件、県北が37件。この3エリアには全体の3割しか立地していない。
県の企業誘致担当者は「土地の価格の安さをアピールしているが、都心からの距離やアクセスの良さで県南などに及ばず、立地が進まない」と話す。
県央・県北の雇用創出に期待
これに伴い、雇用の現場に格差が現れている。
茨城労働局によると、県内のハローワークごとの有効求人倍率は、この8年間ずっとつくば市も含まれるハローワーク土浦の管内が県内トップで、古河や常総も上位に並び、県南や県西の雇用環境がよい。一方、県北の高萩や常陸大宮が下位の常連になっている。
こうした中、県が県央・県北の雇用創出効果も期待するのが、ひたちなか市にある常陸那珂工業団地の拡張地区だ。
大井川知事の肝いりで23年度から整備を始めた工業団地で、57ヘクタールと東京ドーム12個分の広さがあり、分譲予定面積は県内で一番大きい。
港湾の常陸那珂港区と北関東道から続く有料道路に近い立地を売りにしており、県は今年度新設した最大100億円の補助制度を有効活用して、グローバル企業のフラッグシップ拠点の誘致も目指す。
知事選候補者、賛否分かれる
県の企業誘致について、知事選に立候補した新顔で茨城大名誉教授の田中重博氏は「大規模工業団地の造成や企業誘致でもうける施策に執着し、県民の暮らしや福祉支援にきわめて冷たい」とし、「(県民が)社員としてどれだけ雇用されたのか明らかになっていない。雇用が増えなければ多額の税金を使った企業誘致は企業のためだけのものになる」と批判する。
新顔で元警備会社員の内田正彦氏は「雇用促進や地域活性化につながるので企業誘致推進は賛成。当選したら引き続き進めていきたい」と話している。
■茨城県知事選候補者の顔ぶれ
大井川和彦61無現② 〈元〉ドワンゴ役員
=自民、国民民主、公明推薦
田中 重博78無新 茨城大名誉教授
=共産推薦
内田 正彦51無新 〈元〉警備会社員
(敬称略、届け出順、数字は投開票日現在の年齢、丸数字は当選回数)