エネルギー基本計画について議論した経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」=2024年12月17日、東京都千代田区

 今年の夏も経験したことのない暑さに見舞われた。気候変動対策、脱炭素化は喫緊の課題なのに、日本では歩みが遅い。環境問題に長く携わってきた専門家は、国のエネルギー政策の決定過程の中にその理由の一端があると指摘する。

 気候変動の危険性をいくら訴えても、政治に受け止めてもらえない――。十数年前、環境NGO「気候ネットワーク」で長く活動していた平田仁子(きみこ)さんはもどかしさを感じていた。

 「問題解決の糸口が見えないまま運動を続けても、疲弊するだけ。何が必要なのか、どこにアプローチすればいいのか、糸口を探りたかった」

 一念発起し2013年に大学院に入り、ガバナンス(統治)の研究を始めた。「政治の場で切実な問題にならないのは、構造的な課題があるのでは」と思ったからだ。

平田仁子さん

 博士号を取得した後の21年、石炭火力発電への問題提起と運動が評価され、環境分野のノーベル賞ともいわれる「ゴールドマン環境賞」を受賞した。翌年には、気候政策が専門のシンクタンク「Climate Integrate」を設立した。ガバナンス研究の知見をもとに、脱炭素化に向けた国の意思決定プロセスの分析を進めている。

月1回の「論壇時評」掲載に向けて、委員が推薦した論考を1本選んで、詳しく紹介します。今回は平田仁子さん「第7次エネルギー基本計画による脱炭素化の行方」(環境と公害7月号)を取り上げました。

 そんな平田さんが環境問題の…

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