香川県東かがわ市引田のしょうゆ蔵「かめびし屋」は、全国で唯一残る伝統の製法「むしろ麹法」を270年にわたって守り続ける。2021年には「讃岐の醤油(しょうゆ)醸造技術」として国の無形民俗文化財に登録された。なぜ今も古来の製法にこだわるのか。18代目の岡田佳織さん(56)に聞いた。
――「むしろ麹法」とは、現在主流の製法とどのように違うのですか
しょうゆは現在は機械での製造が主流となっていますが、むしろ麹法は原料となる麹をむしろの上で寝かせ、人が3日3晩、寝ずの番をしながら管理して造ります。そうしてできた麹の酵素は分解する力が強く、できあがるもろみのうまみが増します。江戸時代、西日本で主流の製法だったのですが、手間がかかり、大量生産に向かないため、徐々にやめていくところが増え、現在も継承しているのは、かめびし屋だけになってしまいました。
――長期熟成も特徴ですね
一般的なしょうゆメーカーは数カ月で製品ができあがりますが、かめびし屋ではもろみ蔵の木おけで少なくとも2年、長いものは20年以上熟成させます。蔵にすみついている230種以上の乳酸菌や微生物(かめびし菌)と四季折々の自然の力で、ゆっくりと素材のうまみが引き出されていきます。
――なぜ18代目を継いだのですか
親の許しを得ずに結婚し、大…