かさの裏のひだ1本1本まで再現したシイタケ。ころんとしてかわいいネズミの男雛(おびな)と女雛(めびな)。根元のぶつぶつまでリアルなタケノコ――。着物の帯にものをつり下げる際に使う留め具「根付」。梶浦明日香さん(42)は、伊勢で採れるツゲを使った伊勢根付の職人だ。職人になる前はNHKのキャスター。憧れだったキャスターから2010年、伝統工芸の世界に入った理由を聞いた。

彫刻刀を使い分け根付を作る梶浦さん。2018年にはロンドンの公募展で大賞を受賞した

 職人になったきっかけは、NHK津放送局のキャスターとして担当した、東海3県の職人さんを紹介する番組のコーナーでした。取材するうちに、伝統工芸というのは、その地域の歴史や気候など全てが合わさってできた「その地域の宝」だと思うようになりました。でも目の当たりにしたのは、取材したほぼすべての工房に後継者がいないという厳しい現実でした。

「職人をしているなんて知られたくない」若者に取材を断られ

 「伊勢湾台風(1959年)…

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