贋作の疑いがある高知県立美術館所蔵の「少女と白鳥」=同館提供

 高知県立美術館は7日、所蔵するドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの油彩画「少女と白鳥」について「贋作(がんさく)の可能性が極めて高い」とする調査結果を発表した。「伝説の贋作師」と呼ばれ、ドイツ警察による逮捕歴がある画家ヴォルフガング・ベルトラッキ氏の作品とみられるという。

 「少女と白鳥」(69・0センチ×99・3センチ)はドイツ表現主義を代表するカンペンドンクの1919年の作とされてきた。同館が96年に1800万円で名古屋市の画廊から購入した。

 県によると、昨年6月、ベルトラッキ氏による贋作の疑いを外部から指摘され、調査を始めた。京都大の田口かおり准教授(保存修復)の分析の結果、使われていた顔料のうちチタニウムホワイトなど4色は制作当時には存在していなかったことが判明した。

 安田篤生館長は「カンペンドンクが制作した時期には一般的ではない材料で、ベルトラッキが贋作制作においてしばしば用いた絵の具だ」と説明した。

 絵の裏側には、実在したドイツ人画商の所有を表すラベルが張られていたが、同美術館がドイツの警察当局から入手した情報でラベルは偽造だと判明した。同じ図柄のラベルがベルトラッキ氏の贋作に多用されていることも確認したという。

 3月にも真贋(しんがん)を結論づける。安田館長は「贋作者のよこしまな動機で描かれた絵であったとしても、多くの専門家が今まで欺かれ、この絵に感銘を受けた人が少なからず存在するということを考えると、皮肉な話だが、よく出来た絵なんだなと改めて感じた」と話した。

 徳島県立近代美術館が1999年に6720万円で大阪府内の画廊から購入したフランス人画家ジャン・メッツァンジェの油彩画「自転車乗り」でもベルトラッキ氏による贋作の疑いがある。

 県によると、1911年ごろのピカソらが始めたキュービズムの特徴を持つ作品とされ、鑑定書もあった。だが昨年6月、ベルトラッキ氏の作品としてインターネット上の掲載画像と酷似していることが判明した。調査を検討している。

 同館の竹内利夫課長(学芸交流担当)は「作品によって画材も違うため、特定の成分の有無だけでは判断できないと聞いている。非常に難しい調査になる」と話した。

「いずれも私が描いた作品」 取材に話すベルトラッキ氏

 ベルトラッキ氏は昨年11月…

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