(21日、第106回全国高校野球選手権大会準決勝 神村学園1ー2関東第一、京都国際3ー2青森山田)
智弁和歌山前監督・高嶋仁の目
準決勝まで本塁打は7本ですか。低反発になる前の基準のバットだったら、スタンドに入っただろうという打球は何本も見ました。どこの監督さんに聞いても「打ち上げると打球が失速する」と言います。本塁打になった打球も、フライではなくライナー性が多かったと思います。
対策としては、バットを内側から出し、芯で球をつかまえる。そして低く強い打球を打つ。単打でつなぐ京都国際の打撃のように。
僕が監督をしていたころ、練習では竹製のバットを使っていました。金属製を使うのは試合だけ。竹バットは芯で打たないと飛ばないし、手が痛いんです。正しい技術が身につきます。
バントや走塁、堅い守り。高校野球も昔の木製バット時代のような「スモールベースボール」に戻るかもしれません。僕が監督時代に言っていた「点を取られても本塁打で取り返せ」という野球では勝てなくなるでしょうね。
これまでも選手たちは、金属製バットの重量制限が変わるなど打撃性能を抑制するルール変更に対応してきました。智弁和歌山でも筋力トレーニングや徹底した振り込みで克服しました。2、3年たてば各校とも低反発バットに対応するでしょう。それでも、一大会40発、50発ということはないと思います。選手の将来を考えても、大学や社会人、国際大会で木製を使うわけですから、いい方向に向かっていると思います。
低反発バット導入を象徴するように、関東第一、京都国際とともに投手力のいいチームが勝ち上がりました。
関東第一は接戦に強い。熊谷俊乃介捕手が要です。球を受けたらすぐに投手に返し、打者に考える間を与えない。守備にも好リズムを呼んでいます。
京都国際は中崎琉生(るい)、西村一毅の両左腕。特に2年生の西村投手が好調です。2、3点の接戦が予想されるだけに、どちらが先取点を取るか。継投などベンチの采配にも注目です。(智弁和歌山・前監督)
ここ10年の本塁打と総得点
大会(開催年) 本塁打 総得点 犠打
97回(2015、48試合) 32 466 166
98回(16、48試合) 37 429 162
99回(17、48試合) 68 528 165
100回(18、55試合) 51 504 175
101回(19、48試合) 48 492 159
102回(20) 中止
103回(21、48試合) 36 367 150
104回(22、48試合) 28 482 161
105回(23、48試合) 23 455 165
106回(24、47試合) 7 305 173
(100回は記念大会のため56校が出場。103回はコロナ禍による不戦勝2試合を含む。106回は準決勝終了時点)