日本福祉大学教授・藤森克彦さん

 高齢期の生活を支える年金。現在の制度を見直す法律が13日に成立しました。今回の見直しや今後の課題について、日本福祉大学の藤森克彦教授(社会保障論)に聞きました。

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悲観論とは別の未来

 公的年金について、世間では「若い世代ほど受給額が減っていく」というイメージが広がっています。しかし、昨年政府が初めて行った「各世代における65歳時点の平均年金月額の推計(分布推計)」をみると、そんなことはありません。

 具体的には、2024年度末に65歳(1959年度生まれ)の人の平均年金月額は12.1万円でしたが、20歳(2004年度生まれ)の人は22.5万円(24年度価格)になり、87%も増えます。これは経済が順調に成長する場合の年金額ですが、過去30年のような経済があまり元気のない状況であっても、20歳の人の実質年金額は現在の65歳に比べて13%程度増えると推計されています。

 公的年金には少子高齢化が進めばそれに応じて給付水準を調整する仕組みが入っているので、そんなはずはないと思われるかもしれません。若年世代の年金が増える理由は、若年世代ほど厚生年金の加入期間が延びるためです。特に女性では、厚生年金に20年以上加入する人の割合は、現在の65歳では4割弱にすぎないのですが、20歳では7割台になると試算されています。それは経済が順調に進もうが、過去30年の投影だろうが、さほど差はありません。

 働き方が変わり就労期間が延びれば、年金額の増加が給付水準を調整する仕組みの影響を上回ります。分布推計は、人々の生活実態に合った将来の年金額の見通しです。これまで語られてきた悲観論とは別の未来が示されています。

今回の底上げ策に懸念

 成立した年金改革関連法では、基礎年金の給付水準の底上げを図る措置が付則に記載されています。底上げの目的は低年金者への対応であり、その実施は29年の財政検証を踏まえて判断することになっています。

 低年金者に向けた対策は重要です。しかし、基礎年金の底上げ策には限界があると考えています。なぜなら、多くの低年金者は保険料の未納・滞納期間があり、基礎年金の満額受給になりません。保険料拠出履歴に比例して基礎年金の底上げをしてもあまり給付は増えません。

 一方、基礎年金の底上げを行…

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