くみ上げた地下水の熱で代替フロンを蒸発させる熱交換器。蒸気は奥にあるタービンに送られる=2024年5月29日、北海道函館市臼尻町、野田一郎撮影
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 再生可能エネルギーの地熱資源としては200度以下という低い温度の地下水を利用できる「バイナリー方式」の地熱発電所が、北海道函館市で商業運転を始めた。開発したオリックス(東京)によると、この方式での出力は国内最大規模で、年間発電量は一般家庭の年間消費電力に換算すると1万3640世帯分になるという。

 「南茅部(みなみかやべ)地熱発電所」は太平洋に面した全国有数の昆布産地・函館市南茅部地区の道有林内にある。5月29日、発電所の設備が報道陣に初めて公開された。

 深さ400メートル以上の地下からくみ上げた約180度の地下水の熱で、水より沸点が低い代替フロンを沸騰させ、その蒸気によってタービンを回して発電する仕組み。発電に使った熱水は全量を地下に還元し、水資源の保全を図る。代替フロンは冷やして液体に戻して何度も使う。冷却装置は空冷式を採用し、周辺に水蒸気が飛散しないようにして樹木が枯れる原因になる樹氷の発生を防ぐ。

 運転開始は5月1日。出力は6500キロワットで国内最大規模となり、年間発電量は最大5700万キロワット時。総事業費は非公表。発電した電気は、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)を利用して北海道電力ネットワークに販売する。

 これまで国内の地熱発電は、地下の200度以上の蒸気や熱水を直接利用してタービンを回す「フラッシュ方式」が主流だった。バイナリー方式の主な発電所は九州地方に集中しており、北海道内では北海道電力などによる森バイナリー発電所(森町、2千キロワット)がある。

 オリックスは「温度が比較的に低い地熱資源の利用拡大につなげたい」としている。(野田一郎)

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