ピアスも茶髪も、制服も運動着も、かばんも上履きもすべて自由。授業を含め、「そろえない」教育の実現に挑んでいるのは新潟県境の豪雪地、長野県栄村だ。村民主体の議論を見つめてきた下育郎教育長(62)に聞いた。
――教育長就任から2カ月後、教育委員会が決めるのではなく、村民が中心となってこれからの学校や教育を話し合う場「みんなで学校を創ろう!」を立ち上げました。
村は2011年3月、東日本大震災の翌日に最大震度6強の県北部地震に見舞われ、人口減少が進んだ。少子化もあって10年に145人いた小中学生は24年に計65人と半分以下に減るなか、学校をどう存続させていくかという話が村で出ていたが、知らない村民も少なくなかった。地域の皆さんの意見を知り、教育の在り方を考える場を作りたいとスタートしました。
学校統合ありきで教委側が一方的に説明するのではなく、「この村で願う教育はどういうものですか」という問いかけを大事にしたかった。
重要なのは、「村を捨てる学力」から「村を受け継ぐ学力」への転換ではないか。生きていく上での芯となり、いつかは帰りたいと思える「ふるさと」に触れる、栄村らしさを生かした教育を村民と話し合いながら築きたかった。
校歌も子どもの手で キーワードは「自学共育」
――「みんなで学校を創ろう!」は24年11月までに22回(主に平日の夜2時間)のワークショップ(WS)を開き、10代から80代の延べ636人が参加しました。
延べ数で村民の約4割の参加…