双子の野ねずみが主役の人気絵本シリーズ「ぐりとぐら」で知られる児童文学作家の中川李枝子(なかがわ・りえこ)さんが14日、老衰のため東京都内の病院で死去した。89歳だった。葬儀は家族葬として営む。喪主は長男画太(かくた)さん。お別れの会は未定。
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1935年、札幌生まれ。都立高等保母学院を卒業後、都内の保育園に保育士として勤めた。仕事の傍ら、創作活動を開始。園児をモデルに書いた「いやいやえん」で62年に作家デビューした。
翌年、代表作「ぐりとぐら」シリーズの1作目を発表した。双子の野ねずみが森で大きなたまごを見つけ、カステラを焼いて動物たちと仲良く食べる物語。当時、ホットケーキが出てくる「ちびくろ・さんぼ」が大好きだった園児たちのために、「もっと上等なものをごちそうしてあげたい」と、筆を執った。絵は妹の山脇百合子さん(旧姓大村、2022年死去)が担当した。
「ぐりとぐら」は現在までに250刷、発行部数571万部のロングセラーに。英語や中国語、韓国語などに翻訳され、海を越えて世界中の子どもたちに親しまれている。全22作のシリーズ累計でも2200万部を超えている。
このほか、「ももいろのきりん」「そらいろのたね」など、幼児向けの物語を多く書いた。アニメ映画「となりのトトロ」の主題歌「さんぽ」の歌詞も手がけた。13年に山脇さんとともに菊池寛賞を受けた。
絵本評論家の広松由希子さんは「保育士の経験を生かし、子どもを喜ばせる工夫を考え、子どもと同じ目線で物語を生み出した。例えば、『ぐりとぐら』は子どもが幸せを感じられる要素がつまっている」と話す。