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池澤夏樹さん=2024年3月7日、朝日新聞東京本社
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 いま見ておかなくてはいけない。そんな思いから8年ぶりに辺野古に行きました。国が沖縄県知事の権限を奪う代執行によって、新たに埋め立て工事を始めてから1カ月後、2月9日のことです。

 その日は雨でした。

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 基地建設に反対し座り込みをする人たちを、機動隊員が排除していく。そこに1台、また1台とトラックがゲートの中に入っていく。その様子を見ながら、いったい誰に利がある工事なのかと考えました。

 完成まで12年かかるというが、軟弱地盤対策の難工事によって工期はさらに遅れるかもしれない。総工費は3500億円ほどから1兆円近くになったが、もっと膨らむのではないか。完成のころには、今工事を進めている政治家や官僚は引退し、だれも責任をとることはない。そもそも完成するかも疑わしい、と私は見ています。

あのとき、話題にものぼらなかった子どもたち

 もうかる人は少なくともいる。工事を請け負う大手ゼネコンやマリコン(海洋土木会社)には金が入る。めぐり巡って利を得る人がいる。

 普天間飛行場を東京に持って…

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