石破茂首相が高らかに掲げる「地方創生」。その源流は竹下登元首相(1924~2000)が提唱した「ふるさと創生」だ。今年は竹下氏の生誕100年。27日に投開票された衆院選のさなか、竹下氏の「ふるさと」である島根県雲南市掛合(かけや)町(旧掛合町)を記者が歩いた。
今回の総選挙から旧掛合町区域が含まれることになった衆院島根1区では、1996年の小選挙区制導入以降、自民党の細田博之氏が連続当選。島根は「保守王国」と呼ばれてきた。だが、細田氏の死去に伴う今年4月の補選で立憲民主党が勝利。今回の総選挙でも立憲民主党が議席を守った。
松江市から車で約1時間。旧掛合町区域は人口2300人余り。そこに竹下氏の古い生家があった。玄関には今も「竹下登」の表札が掛けられている。
今のあるじで竹下氏の異母弟の三郎さん(76)に広い土間に通された。梁(はり)には、竹下氏の回顧録「政治とは何か」に出てくるツバメの巣がいくつも残されていた。「ツバメは毎年来ます。無碍(むげ)にはできないんです」。春になると小窓は開けておくそうだ。
この場所を今年4月、思わぬ人が訪れた。立憲民主党衆院議員の小沢一郎氏(82)だ。自民党竹下派の「七奉行」と呼ばれ、その後、竹下氏とたもとを分かった。
「行っていいですか、ではなく、行きます、という一方通行。でもどんな人でも墓に参っていただくのはありがたいので、拒否はしません」
立憲民主党と自民党の候補が火花を散らしていた衆院島根1区補選のまっただ中。自宅裏の山手にある竹下氏の墓まで案内したが、多くの報道陣が待ち構えていた。マスコミが来るとは聞かされていなかった。選挙利用だと感じたという。
小沢氏に「やっと来られまし…