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信州大が開発した浄水技術を使った給水器「swee(スウィー)」。長野県松本市で設置が始まり、今では長野市や茅野市など県内各地に広がりつつある=2024年6月28日午前、長野市のホテル国際21、小山裕一撮影

 信州大学が開発した給水器の設置が長野県内の公共施設やホテルなどで広がっている。独自の浄水技術を採り入れた給水器で、容器を持参すれば無料で利用できる。「ペットボトル削減で、脱炭素に寄与できる」と捉える自治体からの問い合わせが続いているという。

 「swee(スウィー)」と名付けられた給水器で、信州大が開発した結晶材料「信大クリスタル」が用いられている。水中に含まれているミネラル分を残しつつ、重金属などの有害物質や残留塩素を取り除くことができるという。

 まず2021年11月に松本市役所に置かれた。市はペットボトルのごみを削減するために水筒などのマイボトルの活用を推進しており、スウィーの設置につながった。

 「大学が開発した浄水技術を広く発信しよう」と、信大は自治体関係者も参加している各種イベントやシンポジウムなどでPRした。同年度内に松本、長野両市の計11カ所に置かれた。

 さらに、翌22年度には茅野市役所のほか、ホテル国際21(長野市)でも導入された。スウィーの運用を管理している信州大の学内組織「信大クリスタルラボ」によると、今年6月末現在で5市村に計31台設置されたという。

 機器の導入に30万円前後、浄水装置のカートリッジ代や水道代などの維持費として年3万円ほどが必要になるが、最大の売りは「ペットボトルの使用を控えることで、脱炭素に貢献できること」だという。

 信大クリスタルラボによると、500ミリリットルのペットボトル1本で考えた場合、運搬や貯蔵、販売、廃棄など一連のサイクルで239グラムの二酸化炭素を排出する計算になるという。一方、スウィーの水を水筒などに詰めて利用すれば、排出量は10分の1以下に抑えられるという。

 ホテル国際21の担当者は「信州大の活動に共感し、給水スポットとしてお客様へのサービスとして置いた」と語る。松本市の場合、設置してからの2年半で、500ミリリットルのペットボトルに換算して17万6千本(8万8千リットル)分の利用があったという。今年秋には市南部のJR村井駅にも設置予定で、市の担当者は「給水スポットが市内各地にあれば、マイボトルの利用が進む」と期待する。

 信大クリスタルは県内で日本酒やビールの製造に用いられているほか、浜松市の会社が製造・販売する携帯型浄水ボトルにも採り入れられている。また、タンザニアの村でも浄水装置として活用されている。

 信大クリスタルラボ副所長の土井達也・准教授は「信大の浄水技術は、すでに実社会で活用されている。スウィーの設置を進めれば、大学としても環境問題の解決に貢献できる」と話す。

 今のところは信大の関連施設や公共施設が中心で、今年度も設置箇所が増える見通し。ゆくゆくは県外にも広げたいという。(小山裕一)

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