被爆80年に向けて広島を舞台に撮った映画「惑星ラブソング」が6月、全国公開された。UFO博士役で出演している俳優の八嶋智人さんに、広島とのつながりや、新しい平和の映画を作る意義などについて聞いた。
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この映画の監督は広島出身の時川英之さん。平和がテーマのSFファンタジーだけど、舞台として原爆ドームや平和記念公園も出てきます。その中に潜むリアリティーを持って帰ってほしい。
広島のテレビ局でレギュラー番組を持ったのがきっかけで広島とのご縁が一気に増えました。婚活をテーマにした映画の撮影で2週間ほど滞在した2016年は、広島カープ3連覇の最初の年。僕はそこからファンなんですよ。当時まだ小学生で野球を始めたばかりの息子もディープなカープファンになった。
「男2人旅」で息子と広島に来て、野球の試合を見て、ご飯を食べて。せっかくだからと平和公園に行く。そうすると、息子の方が「ここではふざけてはいけない」と言う。説明をしなくても、何かを感じ取る場所なんだなあと。
2003年かな、初めて広島で劇団公演をやった時の打ち上げで、何人かで酔っ払って、「そういえば原爆ドーム行ってねえな」と朝方、みんなでふざけてわいわい歩いていったんですよ。
土地にしみ込んだ記憶
そしたら途中から、やっぱりそんな酔っ払ってふざけて来るところじゃないって、だんだんみんなが黙り始める。全員が。到着した頃には、ちゃんと祈らないといけないって自然に思っていた。
僕は以前、古い建物を巡るBSの番組をやっていて、建物そのものに興味があります。原爆ドームを見ると、かつてはとても華やかな最先端のビルだったことがよく分かる。広島はとてもハイカラな街だったんだなと。息子にもそんな話をして。
原爆ドームの目の前で演じたシーンは、夜中から明け方にかけて撮影しました。完成した映画を見た時に、時空を超えてそこにあるという原爆ドームの説得力と、ハイカラだった時代を醸し出す何かが、とても色濃く出ていた。その土地の記憶みたいなものが。人類に二度とこういうことが起こってはならないと広島の人が祈り続けてきたことが、土地にしみ込んでいる感覚があります。
僕は奈良県人なので子どもの…