今月末に閉館する東京・六本木の俳優座劇場で19日、最後の公演が千秋楽を迎え、約70年の歴史に幕を閉じた。最後の舞台に駆けつけた観客たちが拍手で別れを告げた。
同劇場は1954年に開場した後、80年に建て替えられ、9階建てのビルの中にある現在の形になった。現代演劇を中心に数多くの作品が上演され、戦後の新劇ブームをリードする役目を担った。劇団俳優座とは別組織の株式会社俳優座劇場が運営し、プロデュース公演では全国各地を巡ってきた。だが、設備の老朽化や収支の悪化により、2年前に閉館が発表された。閉館後も当面は、劇団は同じビル内の俳優座スタジオなどで公演を続ける。
最終公演となった「嵐 THE TEMPEST」(シェークスピア作、小田島創志翻訳、小笠原響演出)は、追加公演が行われるなど注目を集めた。最終日に足を運んだ観客の中には、終演後30分経っても名残惜しそうに劇場内を撮影して回る人も少なくなかった。70代の女性は「子どもの頃から来ていたので、閉館は信じられない。客席と舞台に一体感がある数少ない劇場。数々の名作をありがとうと伝えたい」と話し、別れを惜しんだ。