猫を胸に抱くもの、「漱石」と刻まれた本を持つもの、はたまた、とっくりとおちょこで楽しげに酒を酌み交わすもの……。個性豊かな羅漢が肩寄せ合うように並ぶ光景が、いま外国人旅行客の間で人気を集めている。

【撮影ワンポイント】愛宕念仏寺

どこにレンズを向けても「写欲」がくすぐられる。圧倒的な数の羅漢像は、コケが生えたり、表面が風化していたり、なかなかうまく表情をとらえられない。天気は曇りから小雨へ。コケの質感が増してきた。参拝者の多くが外国人で、像と同じポーズで記念写真を撮る姿も多く見られた。明るい雰囲気も込められたらと思い、撮影した。(新井義顕)

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こけむした表情が、どれも柔らかく見える羅漢像=2024年10月29日午前10時58分、京都市右京区、新井義顕撮影

 京都市右京区の渡月橋を行き交う観光客を横目に、阪急嵐山駅からバスに揺られること15分。人混みから逃れるように奥嵯峨へと上っていった先に、愛宕(おたぎ)念仏寺はある。建立は奈良時代にさかのぼるという天台宗の古寺で、大正時代の1922年に現在の地に移築された。50年の台風で甚大な被害を受け「京都一の荒れ寺」と呼ばれたほどの廃寺を再興しようと、住職になったのが仏像彫刻家の西村公朝(こうちょう)さん(1915~2003)だった。

 「多くの人に親しんでもらえ…

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