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「紙本著色少菩提寺絵図」と、所蔵する西応寺の奥野賢悟住職=2024年5月20日午後1時59分、滋賀県湖南市、松浦和夫撮影
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 室町時代に描かれたはずの絵図が、実は江戸後期につくられた偽文書(ぎもんじょ)だったら、文化財指定は取り消すべきか――。滋賀県湖南市で、そんな問題が起きている。指定解除を検討する市に対し、地元住民らは「地元の宝」と反発し、検証を求めている。偽文書の歴史的価値を、どう考えたらいいのだろうか。

 問題になっているのは、西応寺(同市)の「紙本著色少菩提寺絵図(しほんちゃくしょくしょうぼだいじえず)」(縦118センチ、幅134センチ)。奈良時代、聖武天皇の命で僧の良弁(ろうべん)が開き、戦国時代に焼失したとされる寺院群が描かれる。明応元(1492)年4月や南龍王順の模写などと記され、1977年に甲西町(現湖南市)が文化財指定した。

 ところが、馬部(ばべ)隆弘・中京大教授が2020年に出した著書などで、絵図に記された明応は改元が7月で、元年4月は存在しないことを指摘。南龍王順は江戸後期の国学者・椿井(つばい)政隆(1770~1837)が用いた号の一つで、絵図は江戸後期に椿井によって多数作成された偽文書「椿井文書」だった可能性が高まった。

 市は22年度の文化財保護審…

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