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タイで開かれている国連の「責任あるビジネスと人権」フォーラムに登壇した元ジャニーズJr.の田中純弥さん(右)と中村一也さん(左)=国連フォーラム提供
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 旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.(スマイルアップ))の創業者・故ジャニー喜多川氏から性加害を受けたと訴えている元ジャニーズJr.の田中純弥さん(44)と中村一也さん(38)が17日、タイのバンコクで開かれている国連の「責任あるビジネスと人権フォーラム」に登壇した。

 田中さんは、日本でこの問題が風化しつつあるとして、「問題は終わっていない。何が起こったのかを皆が知る必要があり、徹底した事実調査をするためのしくみが必要だ」と訴えた。

 田中さんは「救済」をテーマにしたセッションに登壇。1995年にジャニーズ事務所(当時)に入り、14歳から繰り返し喜多川氏から性被害を受けたという。子どもの頃に被害を周囲に相談したが、誰も助けてくれなかったこと、性犯罪の時効の壁によって救われない被害者が多くいる現状も指摘した。

 また、雑誌の撮影で訪れた米西部ネバダ州などでも喜多川氏から被害に遭ったと主張している。田中さんは日本では明らかになっていない情報を開示させるために、昨年12月スマイル社などを相手取り、賠償を求めてネバダ州の裁判所に提訴。一方、スマイル社も、田中さんを相手取り、同社が設けた被害者救済委員会が提示する補償額を超えての債務は存在しないことの確認を求めて訴訟を起こしている。

 田中さんは、補償について算定基準の具体的な説明がないことや、金額に合意しなかったり補償の枠組みに応じなかったりする当事者をスマイル社が提訴したことは「極めて不誠実な対応」と指摘。裁判費用や心の負担によって、被害者はさらに何重もの苦しみを強いられていると訴えた。

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 その上で「どのような基準で救済の内容を判断しているのかが事前に分かれば、被害者が金額は妥当かどうかを理解し、納得できる協議ができると思う」とした。

 また、この問題が日本ではすでに風化しつつあるとし、「被害を止められたかもしれない人たちが、見て見ぬふりをして、何もしなかったという過ちを皆が認めることが重要。そのためには問題の構造を明らかにする必要がある」と話した。

 セッションには、国連人権理事会の「ビジネスと人権」に関する作業部会のメンバー、ピチャモン・イエオパントン氏も登壇。イエオパントン氏は2023年8月、作業部会の声明で、「被害者の実効的救済を確保する必要性がある」と指摘していた。

 この日のセッションでは「救済へのアクセスへの障壁を特定することが重要な出発点。苦情処理のメカニズムや有効な救済策を設計する際には、影響を受ける人と協議することや、権利を有する者と被害者への配慮を含め、信頼を確保することも極めて重要だ」と話した。

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