(23日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会函館地区2回戦 知内10―0森・八雲 5回コールド)
連合チーム森・八雲の唯一の3年生、井筒風吹主将(八雲)は試合後、「ありがとう」を何度も口にした。
八雲は昨夏、4校での連合チームで戦い、初戦敗退。その後、部員が井筒主将1人になった時期もあった。
この春、朗報が届く。隣町の森の野球部が4年ぶりに復活したのだ。森町出身の吉田雄人監督(30)は小樽地区の強豪・北照で甲子園に春・夏計3回出場。プロ野球オリックスでプレーした経歴を持つ。森の野球部復活をめざし、地域おこし協力隊として故郷へ戻った。その吉田監督を慕い、道内各地から4人の1年生が入ってきた。
その1人、三上陽斗中堅手は森の主将だ。一回、左中間に鋭い当たりが飛んだ。滑り込んだが捕球できず、適時三塁打を許した。「足を引っ張ってしまった」と三上中堅手。それでもその後の2死三塁の場面では、左中間にきた打球に滑り込みながらグラブを差し出し、ピンチを救った。
井筒主将は、吉田監督からグラウンドでの指示の伝達など、連係の大事さを学んだ。「それで団結力がついた」。まっすぐなまなざしを向ける1、2年生11人を「次の夏は必ず勝てる」と鼓舞した。教師をめざしながら野球を続け、将来は野球部の顧問をしてみたいという。
夏の大会で初めて指揮した吉田監督は、「野球への思いが違う生徒同士が一つの目標を決めて切磋琢磨(せっさたくま)し合うという経験は、高校野球の素晴らしい一面。勝ち負けを越えて、人として上昇するために大事なことだと痛感した」と話した。