おなかに「トンカチでたたかれたような」激痛が襲ったのは、2021年11月末のことだった。
福森大翔(ひろと)さん(29)は呼吸するだけでもつらい痛みに耐えかね、指導する中学生の野球チームの卒団式からタクシーで帰宅した。30分足らずの道中で、4、5回タクシーを止めてもらい、吐いた。
当時住んでいた大阪市旭区の実家で「寝たら治るかも」と思って1時間ほど横になったが、むしろひどくなった。救急車を呼んだ。
大阪桐蔭高の野球部出身。右打ちの強打の外野手で、13年夏の甲子園では2回戦の日川(山梨)戦でサヨナラ安打も放った。立命館大でも野球を続けた後、大手ハウスメーカーに就職し、4年目。営業として成績は右肩上がりで、「本当に、順風満帆」という日々を送っていた矢先だった。
大阪府守口市の守口敬仁会病院に運ばれた。急性膵炎(すいえん)の診断で、入院した。
膵炎の原因として考えられるものに、飲酒や胆石などがある。たしかに、取引先との飲み会は連日のようにあった。8月頃から毎食のように、食べたものを戻すようになり、食欲も落ちていた。
ただ、家の近所の胃腸科で処方された逆流性食道炎の薬で症状は治まり、日常生活に支障はなかったため、あまり気にしていなかった。
膵炎の原因などを調べていく中、主治医となった溝尻岳医師(46)から呼ばれた。
両親と一緒に診察室に入った。「ドラマで見るようなシーンだな」と思った。
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