取材に応じる船井電機の元従業員の男性=2024年11月27日、大阪府

 船井電機の破産で、約500人の従業員は突然解雇された。40代だという元社員の男性は、妻と子どもを抱え、生活費の不足を借金でまかないながら、再就職先を探した。

 船井電機本社の最寄り駅であるJR住道駅(大阪府大東市)で昨年11月下旬、記者は男性と待ち合わせた。会社への思いを聞くとこう言った。

 「せめて、何が起こっていたのかを知りたいです」

船井電機の破産は、なぜ突然申し立てられたのか。なぜ経営陣同士が争っているのか。300億円はどこに消えたのか。キーマンたちに聞くと、言い分は食い違い、「私はだまされた」と口をそろえた。本当にだまされたのは誰なのか?

  • 【前回はこちら】告訴状飛び交う船井電機の新旧経営陣 「会長就任に疑義」の元環境相

 《船井電機は1990年代後半以降に一気に売上高を伸ばした。業績のピークは2006年度で、米ウォルマートとの取引が10億ドルに達するなど連結売上高が約4千億円に達した》

 00年代後半に別のメーカーから中途入社し、テレビ事業の開発を担いました。

 入社して数年間は、会社に勢いがありました。月80時間の残業はざらで、徹夜するときもありました。

 ウォルマートが北米で展開するクリスマス商戦は社内の最大イベントでした。夏ごろには採用モデル数が決まり、テレビなどの仕様の変更から大量の仕入れまで、数カ月かけて進んでいきます。会社全体がそわそわとした雰囲気になりました。

 会社の強みは「安さ」。ウォルマートからの注文も、品質は二の次で、安さが最優先でした。

 ただ、10年代に入ると、次…

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