難病の一つ、潰瘍(かいよう)性大腸炎は多くの病気とちがって、喫煙すると症状が緩和し、逆に禁煙すると悪化する。どうもたばこの煙にも含まれる特定の化学物質が、腸内細菌の構成を変え、症状を悪化させる免疫反応が抑制されるらしい。そんな仕組みを、理化学研究所と群馬大などの研究チームが、患者から得られた試料を使った動物実験で突き止め、科学誌に発表した。
研究チームは「喫煙はほかの様々な病気のリスクのため、推奨していない」とし、この化学物質だけを投与するなど腸内環境を整えることで、新たな治療法の開発につながる可能性があるという。
潰瘍性大腸炎は、腸の粘膜に慢性的な炎症が起き、下痢や血便などの症状が出る病気。故・安倍晋三元首相も患ったことで知られるが、根治療法が今のところない。疫学調査で喫煙者は発症リスクが低く、禁煙で症状が悪化することが知られているほか、腸内細菌が影響している可能性も指摘されていたが、関係がはっきりしていなかった。
研究チームはまず潰瘍性大腸炎の患者84人のふん便を調べ、たばこの煙にも含まれているヒドロキノンなど芳香族化合物と呼ばれる化学物質の濃度が、喫煙者では高いことがわかった。
次に患者の大腸粘膜に付着し…