児童相談所の過酷な労働環境は、職員の心身の健康を損なう恐れがあり、安全配慮義務に違反する――。児相の元職員が起こした訴訟で、千葉地裁が26日、そんな判決を言い渡した。自らの幼少期の体験も踏まえ、子どもと向き合う道を選んだ男性は、判決に安心する一方で「複雑な思いもある」と話した。
- 新人に研修なし、仮眠できず 児相の労働環境めぐり千葉県に賠償命令
原告は、2019~21年に千葉県の市川児童相談所の一時保護所で働いた飯島章太さん(31)。訴訟では、休憩時間や宿直時の仮眠時間にも働いた分の賃金の支払いや、過酷な労働環境で心身に不調をきたしたことへの賠償などを求めた。
ただ、訴訟の目的は、虐待などを受けた児童を支える児相の職場の実態を知ってもらうことだった、という。
ボランティアを通じて気づいた、ふたをしていた感情
飯島さんは大学2年生だった13年、子どもの電話相談のボランティアを始めた。
その前年、東日本大震災で被災した仙台市若林区を、ボランティアとして訪れた。家もなく、田畑の境目も分からない沿岸部を目の当たりにしながら、がれき除去や地域のお祭りの手伝いをした。その中で、津波にのまれながらも生き延びた女性に「命を大事にね」と語りかけられた。
「命からがら生き延びた人の言葉の重みは違った」。2週間ほどのボランティアで、現場で話を聞く大事さを実感したという。
東京に戻り、「自分にもできることをしよう」と考え、選んだのが子どもの電話相談のボランティアだった。
最初は事務の仕事から始め、研修を経て1年ほどで電話相談を受けるようになった。1回3時間を週に1、2回。大学院を修了するまで5年間続けた。
職員からは、「子どもの話を聞いて自分の中でどういう感情が生まれるのかが大事」と言われた。電話を受けながら、自らを振り返り、自分の中の気づきを整理していった。
この体験を通じ、自分の中にふたをしていた感情があることに気づいた。
父とのことだった。
飯島さんにとって、父は「す…