約1300年の歴史を誇る徳島県の伝統工芸品、阿波和紙を特産の藍で染めたアートが、今夏に就航予定の豪華クルーズ船「飛鳥Ⅲ」の客室に飾られる。同県吉野川市の伝統工芸士、藤森美恵子さん(74)が丹精込めて染めた254枚のアートが、国内外の乗客たちをもてなす。
阿波和紙は、吉野川沿いの同県吉野川市山川町に紙すきの技術が伝わったのが始まりとされ、奈良時代に朝廷に献上されたとの記録も残る。水に強く、破れにくいのが特徴で、最盛期の明治時代には製紙業者が吉野川流域で約500戸を数え、徳島産の藍で染めた藍染め和紙も生産されてきた。近年は独特の質感を生かし、国内外のアーティストに人気という。
藤森さんは、藍染め和紙を手がけて20年余りになる染め師。阿波和紙の風合いに藍の染色技法を組み合わせた、インテリアに使える数多くのアートパネルなどを作り続けてきた。
全客室の3割に大小パネルで
一昨年、クルーズ船の運航会社「郵船クルーズ」(横浜市)の担当者が藤森さんのアートパネルをネットショップで見かけ、ドイツの造船所で建造中のクルーズ船「飛鳥Ⅲ」の客室に「インテリアとして飾りたい」と依頼した。全客室の約3割にあたる127室のスタンダードバルコニーの壁に、大小一組のアートパネルを飾りたいという注文だった。
あまりの数の多さに藤森さん…