ヴォーチェ・フォンターナのみなさん=2024年8月20日、富山市呉羽町、法野朱美撮影

 第47回全日本おかあさんコーラス全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催、キユーピー株式会社協賛)が24、25日、札幌市の札幌コンサートホールKitaraで開かれる。中部支部代表として、富山県内から女声合唱団「ヴォーチェ・フォンターナ」が7回目の出場を果たす。

 団名は「泉のように美しいハーモニーが湧き出るように」との思いを込めて名付けた。高岡市を拠点に今年で結成37年目。杉本朋子さん(68)を中心に、音楽教室の講師らで結成され、現在は60~80代の20人が歌声を重ねる。

 創立メンバーのひとり、メゾソプラノの礒島由佳子さん(68)は、特別な思いを胸に歌う。結成の翌年、1988年に札幌市で行われた全国大会への切符をつかんだが、出産間近で出場をあきらめた。その後、子育てで団から離れた。

 あれから30年以上が経った3年前、合唱団に復帰した。ブランクはあったが、その間も歌うことはやめなかった。「あの時果たせなかった人生のつじつまあわせに来た。出戻りでリベンジよ」と張り切る。

 杉本さんは言う。「家庭環境でやむを得ず離れる人もいるけれど、いつでも帰ってこられる場所にしたい」

 披露するのは、詩人や童話作家として知られる岸田衿子作詩、信長貴富作曲の「風の季節・花の季節」から、自然の雄大さを繊細なハーモニーで表現する「移る季節」と、失恋でゆれる心の内を複雑に絡むピアノの旋律に乗せて描く「われもこう」の2曲だ。

 総仕上げの練習があった20日、指揮者で声楽家の竹内雅挙さん(53)の指導のもと、言葉の余白や背景にある思いを考えてみようと、全員が意見を交わしていた。

 「誰もが活発に意見を出し合って音楽を深めていくのがヴォーチェ流」と杉本さん。加えて、それぞれの人生経験や重ねた年齢の分だけ、より豊かな表現を生み出せるのだという。室内は、あたたかで包み込まれるような歌声が泉のようにあふれていた。(ライター・法野朱美)

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