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「ミッション・ローカル」は収益の75%が読者からの寄付だ=ニューヨーク・タイムズ

Local News Is Dying, but Not in San Francisco

 地方メディアのビジネスが苦境に立たされていることは周知の事実だ。全米で「ニュースの砂漠化」が進み、いまや全米の半数以上の郡は、報道機関がたった一つか、あるいは一つも残っていない。

 しかしサンフランシスコでは、実験的な試みをしようという意欲によって、地方メディアが復活しつつある。半世紀の歴史を持つ地元の報道機関は、非営利団体になり始めている。また、資金力のある支援者の助けを借りているところもある。広告収入に頼っていた地方メディアが減少するにつれ、ニュースサイトはその差を埋めるために購読料に頼るようになっている。

 人口約80万人のサンフランシスコには、超ローカルな非営利団体やラジオ局から、「サンフランシスコ・スタンダード」のような億万長者の支援を受けた会社まで、27の報道機関があり、サンフランシスコの記録的な新聞社になろうと競っている。アメリカの大都市としては珍しく、サンフランシスコには10年前とほぼ同じ数のメディアがあるのだ。

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2021年に創刊された「サンフランシスコ・スタンダード」はサンフランシスコ市のニュースに特化し、特に市政の報道に力を入れている=ニューヨーク・タイムズ

 「ベイエリアには、あらゆる形態のニュース・モデルが存在すると言ってもいいくらいだ」と、サンフランシスコ最大の新聞「サンフランシスコ・クロニクル」の発行人であるビル・ネーゲル氏は、言った。「非常に競争が激しい環境だ」

 この地域がこれほど多くのニュースを支えることができる理由はいくつかある。IT産業によってベイエリアは全米で最も裕福な地域のひとつとなり、その富が大小の寄付を通じて地元のニュースを支えている。また、この地域は教育水準が高く、一般的にそれは有料ニュースの読者数と相関関係がある。

 カマラ・ハリス副大統領、ナンシー・ペロシ下院議員、ギャビン・ニューサム州知事といった地元政界のスターから、ヌーディストの善きサマリア人、無人の自動運転車の事故、争いの絶えない地元政治に至るまで、サンフランシスコには報道すべき、また読むべきニュースがたくさんあることも助けになっている。

 「サンフランシスコは珍しい。この国の多くの大都市は、営利紙に広告を出す大企業であれ、非営利ジャーナリズムに資金を提供する裕福な個人や財団であれ、こうしたことに資金を提供するのに必要なリソースを持っていないからだ」と、「テキサス・トリビューン」の共同創設者で、非営利ニュースの資金調達を支援する「エマーソン・コレクティブ」のアドバイザーであるエバン・スミス氏は言う。「そして、実際にこのような組織を立ち上げ、運営できるだけの才能を持つ人材は、多くの場所にはいない」

 長く続くかどうかはまだわからないが、新しいビジネスモデルはサンフランシスコから南へ車で1時間のところに本社を構えるグーグルやメタのようなシリコンバレーのIT大手に吸収されてきたオンライン広告に代わる、切望されていた選択肢を提供するものだ。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

アメリカ国内のあちこちに地元メディアがない「ニュース砂漠」が生まれるなか、サンフランシスコだけは例外なのだそうです。なぜこの地域のメディアは復活しつつあるのでしょうか。

 カリフォルニアの新聞は特に…

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