Smiley face
写真・図版
八代目尾上菊五郎さん ©松竹
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 映画「国宝」が大ヒットを続けている。9月8日時点で興行収入は133億円を突破した。外の世界から歌舞伎の世界に入り、才能を開花させる喜久雄(吉沢亮)と、伝統の家に生まれた俊介(横浜流星)をめぐるこの映画には、現実の歌舞伎俳優たちも注目している。八代目尾上菊五郎さんもその一人だ。5月に始まり、10月名古屋、12月京都と続く、襲名披露のただ中にいる菊五郎さんに話を聞いた。

 (一部、映画の内容について語っています)

  • 映画「国宝」のヒット タイパ時代に映画館へ向かわせるSNSの熱量

 ――映画はいつごろご覧になりましたか。

 「公開からあまり間がない頃、映画館で見ました。あの長大な原作をどうやってまとめるのだろうと思っていましたが、喜久雄と俊介を中心に、それぞれの葛藤と芸に対する思いが凝縮して描かれていて、あっという間の3時間でした」

 「私は6年前、原作小説全編をAmazonオーディオブックAudible(オーディブル)のために朗読しました(当時は菊之助)。劇場で、作者の吉田修一先生が黒衣姿で中村鴈治郎さんに付き、丹念に取材しておられるのを見ていて、どんな小説になるのか楽しみにしていましたし、長い期間、歌舞伎の世界を見つめて書き上げた熱意に応えたい気持ちもあって、お引き受けしました」

 ――本は上下2巻の大長編。オーディオブックは21時間以上ありますね。

 「朗読に慣れていないこともあって、1カ月以上スタジオに通いました。会話に方言も多く、指導の音源を聴いて練習し、録音に臨む、の繰り返しでした。苦労いたしましたが、やってよかったなと思っています。多くの方が聴いてくださっているようで、うれしいですね。片岡愛之助さんは『楽屋で支度をしながら聴いています』と声を掛けてくれました」

歌舞伎は「血筋」か「才能」か

 ――本物の歌舞伎俳優からは、映画はどう見えましたか。

 「吉沢亮さんと横浜流星さん…

共有