走る青い車両=2024年12月3日午前11時31分、高松市牟礼町、福家司撮影

 四国霊場85番札所、八栗寺(高松市牟礼町)を目指すお遍路さんや観光客らが使うケーブルカー「八栗ケーブル」が12月、開業60周年を迎える。新幹線と重なるエピソードも多いレトロ車両は、還暦を迎えてなお走り続けている。

 八栗ケーブルを運営する四国ケーブル(同)によると、八栗ケーブルは1930年ごろにいったん開通したが、太平洋戦争中に金属供出で設備が撤去され、以後は運行されていなかった。先代社長の故・赤川庄市さんがお遍路さんとして八栗寺を訪れたとき、寺や地元住民からケーブルカーの復活を要請されたという。

 赤川さんは新会社を設立し、64年12月28日に八栗ケーブルを再開させた。同じ年に東海道新幹線も開業。2両あるケーブルの車両は新幹線と同じ日立製作所笠戸工場(現笠戸事業所)=山口県下松市=で製造されており、当時はやりの流線形のデザインも新幹線を意識していたとみられる。2両の中でも、青と白に塗り分けられた1両は新幹線を連想させる。

 とはいえ、新幹線とは比べものにならない低速の時速12キロで運行。登山口駅と山上駅の間の長さ684メートル、高低差167メートルの路線を4分で上り下りする。運転士は山上におり、車内には乗客の案内やドアの開閉に当たる乗務員が同乗している。

 車内には日立製作所で昭和39(1964)年に製造されたことを示すプレートが今も残り、鉄道ファンに人気という。2両は開業以来、路線外に出たことはなく、修理、点検は駅など路線内で行ってきた。

 四国ケーブル現社長の息子、企画営業部の赤川大樹さん(33)は「今はこの流線形タイプのケーブルカーは、全国でもここだけと聞いている。今後もできる限りレトロな車両を維持していきたい」と話している。同社は60周年を記念して、今月中にもご当地キャラクター「うどん脳」とのコラボグッズを発売するという。

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