歩いた家の数しか票は出ない。握った手の数しか票は出ない。選挙の世界では長くこう言われてきた。
27日に投開票された衆院選神奈川19区(横浜市都筑区、川崎市宮前区)では、共働きで0歳児を抱えるパパたちも選挙に挑んだ。
子育てと選挙を両立することは可能なのか。育児も選挙も、と奮闘した選挙戦を追った。
街頭演説中、陣痛と闘う妻から電話
衆院選が公示された15日の午後7時ごろ。国民新顔の深作ヘススさん(39)のもとに横浜市議で妻の祐衣さん(32)から電話が入った。
祐衣さんは第2子出産のため、横浜市内の産院で陣痛と闘っていた。「20時まで待てません」
ヘススさんは、マイクが使える午後8時まで活動してから産院に駆けつけようと思いながら演説をしているところだった。
演説を中断し、たまたま街頭にいた中学時代の先輩の車に飛び乗った。選挙のたすきとマイク用のヘッドセットもつけたままだった。
産院に着いてから約20分後。長男が元気な産声を上げた。
産院のスタッフも「公示日に生まれるなんて、パパを応援したかったのかもね」。
ヘススさんは長男を抱っこして、「パパ、頑張るよ」と決意を新たにした。
その夜は活動には戻らず、長女(3)も一緒に家族4人で産院で過ごした。
ヘススさんはこの3年近く、子育てと政治活動の両立を模索してきた。
保育園が休みになる週末は、祐衣さんの市議の仕事と重なると特にやりくりが難しい。やむを得ず、夫婦で長女を連れて地域のお祭りの会場を10カ所以上、「はしご」したこともあった。
お祭りを回りたい、でも娘は「帰りたい」
「3件目くらいで娘に『おう…