数々のドキュメンタリー映画を世に送り出してきた想田和弘監督(54)。「ドキュメンタリーの宿命」として、撮影後の苦しみがあると言います。その苦しみから救いだしてくれた言葉とは――。
「公開やめてくれ」で眠れぬ夜
普通の人々の日常にカメラを向ける。長時間、あらゆる場面を撮る。日々の生活、何げない素顔が記録されていく。それを映画として公開しようという時、どんなに気をつけていても、すれ違いは起きる。「撮ったはいいが、公開するまでに一つ高いハードルがある。ドキュメンタリーの宿命です」
さらりとそう話すが、撮った後の人間関係はいつも苦しい。思うようにならないことが多く、ストレスが深まる。「映画の公開、やめてくれ」。そう言われ、夜も眠れなくなることが何度もあった。
精神科医・山本昌知さんを再び追った「精神0」を撮っていたころだったろうか。妻でプロデューサーの柏木規与子(きよこ)さんが、山本さんからこんな言葉を言われたという。
最新作「五香宮の猫」でもやはり苦労が
「他人はみんな磨(みが)き…