当選確実となり、支持者らへのあいさつを終えて事務所を出る斎藤元彦氏=2024年11月17日、神戸市中央区、田辺拓也撮影

 斎藤元彦知事が再選された昨年の兵庫県知事選挙で、地元の神戸新聞社は「偏向報道」などと激しい非難を浴びた。いったい何が起きていたのか。当時、編集局長として選挙報道を率いた小山優取締役(57)がインタビューに答えた。

特集「明日も喋ろう」

 38年前の憲法記念日、朝日新聞阪神支局の記者2人が散弾銃で撃たれて死傷しました。あの銃口は言論の自由を求める市民社会に向けられたもの。そう受け止め、事件について書き続けてきました。
 しかし近年、その市民から新聞やテレビが「オールドメディア」と揶揄(やゆ)され、敵視されることがあります。報道機関は国民の知る権利に応えているか。メディアの世界を知る人たちと共に考えます。

 ――発端は、昨年3月の内部告発に対して斎藤知事が「うそ八百」と批判し、告発者を処分したことでした。7月に告発者が死亡し、副知事が辞職したことで、県政の混乱に注目が集まりました。

 

 内部告発問題の本質は公益通報の通報者(告発者)を捜し、懲戒処分にしたことの是非です。告発にあった知事への贈答品は他の自治体でも見聞きするものですし、パワハラも一つ一つは新聞1面をにぎわす内容とは違うかなと思っていました。

 通報者が死亡して報道が過熱し、贈答品問題が「おねだり」としてワイドショーなどで何度も取り上げられるようになると、違和感も覚えました。神戸新聞では「おねだり」という見出しや表現を原則として使いませんでした。

 

 ――告発者捜しの非を認めない斎藤知事への批判の高まりを受け、県議会は昨年9月に全会一致で不信任を決議し、知事選になだれ込みました。

 

 当時は不信任の先に衆院解散がちらついている状況でした。政党間のつばぜり合いが始まり、どの会派が先に不信任決議案を出すかということに気を取られすぎていたように思います。担当デスクには、辞職させる方向へ筆を走らせないように言った覚えがあります。告発の真偽をただす百条委員会や第三者委員会の調査結果が出ていないのに、辞めるべきだと言うのはどうかと。

 

 ――出直し知事選が決まったとき、斎藤氏が再選されると予想しましたか。

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