二つの職場で働いて精神疾患を発症し、自ら命を絶った愛知県の男性(当時60)が、心理的負荷の「総合評価」で労災認定された。過労自殺をめぐっては初のケースとみられ、遺族は法改正で事後の補償が実現したことには安堵(あんど)しつつ、どの職場も責任をとらない現状に「また同じことが起きるのでは」と懸念を示す。
- 「兼業で過労自殺」労災認定 法改正して初、心理的な負荷を「合算」
「父は人生の目標であり、誇りだった」
名古屋市内で取材に応じた30代の長女は、そう振り返った。隣には男性の死後に生まれた1歳の子がいた。
男性は大学の工学部を卒業後、建設コンサルタント会社などで35年間、橋の設計や保全業務に携わった。いつも専門書を持ち歩き、週末は技術者たちを集めた勉強会を主催。難関の国家資格「技術士」を含む10以上の資格をもつ、スペシャリストとして知られていた。
男性にはいつか国際協力の仕事に就くという夢があった。自らの技術を、発展途上国のために役立てたいと、家族によく語っていた。50歳を過ぎても英単語帳を自作し、食事中も眺めていた。
仕事に誇りをもち、努力を惜…